動物たちの嗅覚の役割
.: * 動物たちの嗅覚の役割 * :.


■動物たちの嗅覚の役割
 嗅覚は味覚と同じ化学感覚で、いわゆる化合物のにおいを検知する感覚です。
この2つは、もっとも古くから備わっているもので、原始的な動物であると、嗅覚と味覚の区別はほとんどありません。
特に昆虫は、味覚と嗅覚が非常に発達した動物で、口や触覚、足、またメスの産卵管に化合物を検知する受容器を持っています。
動物たちにとって、においは自分の周りの環境を知るための大きな情報源になっています。
例えば、魚のサケが生まれ故郷の川に帰ってくるのも、その川のにおい(アミノ酸などの化学物質)に対する記憶によるといわれています。
ウミガメが産卵のために、生まれ故郷の島に匂いの記憶から帰ってくることも、犬が電信柱にかけられた他の犬の尿のにおいで、その場所を所有している犬の存在を知ることも同様の現象です。
私たち人間のような、全感覚の中で視覚が大きな役割を占めるようになった視覚動物では思いもつかないほど、嗅覚は動物にとって大切なものだといえます。

 動物の嗅覚の役割は、大きく三つあると思われています。
1つ目は食に関するもので、食べられるもの、食べられないものを選別することです。
2つ目は、その場の環境の変化を知ることです。
3つ目は、敵と仲間を判別することです。これには、敵からすばやく逃げるためにそのにおいを察知することや、交尾のためにメスを探すオスの行動なども含まれています。
一方、目が発達した人間などの霊長類や、腐食性のコンドルなどを除いた鳥類などは、それほど嗅覚が発達しているとはいえません。
同じように、昆虫などを食べるコウモリも、嗅覚よりも音波のような音響による位置確認によって捕食します。また、もともと陸上動物だったクジラも未だに水中生活に嗅覚が順応しているとはいえず、その代わりに聴覚が発達しています。